「マグニチュードの違いは陰謀」という一部論調について。

やはりマグニチュード9は責任逃れの嘘数字」について。

原発反対運動すること自体に異論があるのではないが、
学術的に比較する数値の違いを「陰謀」というのでは
地震の科学的解明という全く研究分野に政治的意図を持ち込むものであり
「地球は丸い」というガリレオ・ガリレイを宗教で有罪と断罪した危険思想である。

確かにMj(気象庁マグニチュード)とMw(モーメントマグニチュード)という
違った数字は、その科学的意味を知らぬ人たちからすれば
「情報操作」と言いたくなる混乱をもたらすものなのだろう。

だが、このブログの著者katsukoさんは途中で文章がMjとMwの区別をせずに
ただ単純に「M」の一文字だけで論理展開している部分が出現する。たとえば

「M8.4の地震のエネルギーは、M9.0の8分の1になる。 」
(おそらく島村教授の発言をkatsukoさんが書きとめたもの)

という下りだ。

確かに「Mj8.4はMj9.0の8分の1」かも知れないし、
「Mw8.4はMw9.0の8分の1」かもしれない。
しかし

「Mj8.4はMw9.0の8分の1ではない」

ということを忘れた論理飛躍が起きている。
これはいただけない。これでは感情論だ。

「今回の地震はMj8.4であり、かつ、Mw9.0である」

というのが政治色を除いた学術的に正確な記述だ。

20数年前に震源メカニズム解析という手法を使って
それまでは一枚の断層面の傾きと応力分布という単純な仕組みしか
分からなかった地震解析を脱して、小さな断層面一つ一つそれぞれに
震源メカニズムを適用して各小断面がどちらの方向にいつどの速度どの長さで
破壊されていったのか、そしてそれが地球の裏側でどういう揺れを生じるかという
全体像を説明できるようになったのだ。これは科学の裏付けを根拠にした
数値解析で自動的に計算できるインバージョンの進歩であり、
政治的に原発推進の側でもなく原発反対の側でもない。

気象庁は今回、明確に「Mw9.0であることが分かった」と発表している。
「M9.0である」というような曖昧な発表はしていない。

世界の近代数値科学の裏付けのある地震観測では
巨大地震というのは片手で数える程度しか経験していない。
そのそれぞれを共通に比較する手段として海外ではMjを使っていない。
つまりMwを使っている海外の巨大地震と同じ物差しで比較するなら、
こちらでもMwを使った数値を使わざるを得ないからだ。

「Mj8.4で耐えうる地震で大丈夫とされた建築物が
今回のMj8.4(Mw9.0)で壊れたのなら、建築設計の至らなさがある」
ということは言える。ここから先にどういう解析をするのかは
そこに政治的判断を政治家がすることは発生するが、
地震観測する研究者は数値の混同をきたすような表現はできない。

震源メカニズム解析が確立されてきた20年前の時点で
既に古い科学での震源モデルで建設がされてしまっていた建物たちは、
そもそも今の科学で大丈夫な施設とは呼べるものでない。
そういう論理で、今の古い地震対策・津波対策の不備を指摘して
「原発を止めろ!」というのなら私もそれに異議は挟まない。
どんどん止めて、危険を除去したほうがいい。

ただ、今回は気象庁は海外の震源メカニズム解析に
直接比較可能な形で「モーメントマグニチュード(Mw)で9.0」と
発表しており、どっちなのか曖昧な「M9.0」などとは一切言っていない。
曖昧にして政治的に歪曲して伝えているとしたらそれは
政治的に偏ったマスコミがしている可能性が一番高く、
決して気象庁が偏った発表をしたのではないのである。

震源メカニズム解析は純粋に力学という科学を使って
目では絶対覗けない地下の世界の真の世界を説明しようとするものである。
瞬時に高速コンピューターで自動解析して出てくる科学技術である。
高速コンピュータの計算システムに政治の偏向は組み込まれていない。

その事実をねじ曲げる主張を原発反対の根拠として展開することは
逆に政治的権力側によって「誇大で非科学的な主張」と押し切られて
結局原発反対運動を阻害することになるだろう。

だから、マグニチュードの数字の違いをあたかも敵の陰謀であるかのように
高らかに掲げることはやめたほうがいい。
気象庁はそんなことは発表していないのだから。
事実は事実として受け止める度量がなければ、議論でなくて喧嘩である。

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