『第三者』(さだまさし)

題名『第三者』(原詩さだまさし 本詩おのだたけし)



もうどれくらいの時間が過ぎ去ったのだろう

夜の街の信号機の灯がテーブルに反射して

ちょうど僕の指先を照らしている

オーダーしたホットコーヒーは

既に死体の体温のように冷え切っていて

そういえば、君と僕との間に流れる

この何も言えないような気まずい雰囲気を

指先の黄色い光の数を数えながら

しかたなくやりすごしていたのだった



君もこの時間をどう使っていいのか考えあぐねているのかい

さっきからずっと長く伸ばした髪の先を

指に巻きつけては解き 巻きつけては解き

いつもだったらすっかり日常にとけこんで忘れかけていた君の癖

そういえば出会ったころにそんな君のしぐさの一つ一つに

僕はとてもワクワクしたものだった

そんな懐かしい思い出につい笑顔をみせてしまったら

君は「なぜこんな空気であなたは笑えるの」と

刺すような視線で返してきたのだった



もう、明日は僕たち、他人同士になるんだね

あんなに同じ夢を語り合ったのに

まるで異教徒が互いに憎み合うように

今は方向の違う言葉を互いに交わして噛み合わなくなって

これが同じ二人だったんだろうかと

まるで別人を見ているかのようにお互いを見てる



車のライトもまばらになって

夜がどんどん深まっていくことをふと感じさせる

君はもう僕の瞳を見つめる気も無く

壁際のキャンドルの炎をじっと見てる

その赤いキャンドルとテーブルに映る赤い信号とが

次第に溶け合わさっていく



あまりにも静かな僕たち

隣の席の若い二人にも気まずい空気を

感じさせてしまったのかな

カウベルも途絶えて

人通りの少なくなった街角

取り残された僕たち

店員さんがすまなそうに

ラストオーダーを尋ねに来るのだった



僕たちの最后を締めくくるものは何があるのだろう

甘いデザートを頼むほどの気持になれない

溶けあった二つの赤い光は

これが最后の最后の二人の停止信号なんだね

お互いに自分自身の差す傘に包まれて

二人別々に店を出ていかなきゃならないんだね

静まり返った店内にもう流れる曲もなくなった



もう明日は第三者



もう明日は第三者

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